呼と循ゼミナール
心疾患の非観血診断法—(2)心房中隔欠損
吉川 純一
1
1神戸中央市民病院循環器センター内科
pp.1296
発行日 1981年12月15日
Published Date 1981/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203891
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本症は最も頻度の高い先天性心疾患であり,本症のphysical examinationや,心音図,心電図,胸部X線,心エコー図所見などは広く知られるところである。今や最も診断の容易な先天性心疾患となった感がある。
あにはからんや,これが案外くせ者なのである。本症は,しばしば僧帽弁疾患や三尖弁疾患あるいは両者の合併あるいは大動脈弁疾患と間違われたり,たとえ本症が診断されても合併せる他の心奇形が見逃されたりしているのである。僧帽弁狭窄と間違われるのは高級な方であり,それは聴診所見が僧帽弁狭窄(MS)のそれときわめて類似する場合があるからである。むしろ問題なのは高齢者で原因不明の僧帽弁閉鎖不全(MI)や三尖弁閉鎖不全(TI)と診断され放置されていることであろう。一方,合併する重要な心奇形(とくに肺静脈還流異常や三心房心,僧帽弁逸脱)が,心房中隔欠損のダイナミックな所見に目をうばわれて,見逃されていることが少なくない。先天性心奇形の診断において,まさに警戒すべきは,もっとも診断が容易そうな心房中隔欠損の診断といえる。
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