連載 病院管理フォーラム
■医事法・1
世間の常識・医師の非常識
植木 哲
1
1千葉大学法経学部法学科
pp.438-439
発行日 2007年5月1日
Published Date 2007/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100512
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医療の世界も今や聖域とは言えません.これから医師や病院関係者の法的留意点を何回かに分けて書かせていただきますが,皆さんの学生時代には医事法(医事法制学)の講義を聴く機会のなかった人も多いと思います.昔と違い今の医事法教育は大きく様変わりしていますし,医療と法の相互の関係を総合的な観点から捉える視点を無視して完全な診療を行うことはできなくなっています(植木哲『医療の法律学(第2版)』有斐閣).しばし診療や業務の手を休め,医事法の何たるかを一寸考えてみてください.以下の連載は医事紛争対策のマニュアルではありません.ここでは医事紛争の背後にある医療について法的観点に焦点を当てますから,これにより医療紛争の処理に立ち会う裁判官(法律家)の思考方法はわかっていただけると思います.
第1回目のテーマは「世間の常識・医師の非常識」としたいと思います.これは逆に「医師の常識・世間の非常識」と言い換えられます.いま仮に,世間を裁判官・法律家と想定してみてください.医師や裁判官はもっとも典型的な専門家ですが,それぞれの専門家はそれぞれの専門領域を持っており,これまで互いに批判し合うことはありませんでした.それぞれの考え方が常識として尊重されてきたからです(聖職・聖域).しかし今ではこの常識の見方(範囲)に歪みが見られ,常識と非常識との境界が非常に曖昧になっています.医事紛争を例にとりながらこのことを考えてみましょう.
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