巻頭言
小児の呼吸・循環生理の基本的問題
小田 禎一
1
1福岡大学医学部小児科
pp.1067
発行日 1977年12月15日
Published Date 1977/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203129
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かつてComroe教授の研究所(Cardiovascular Research Institute,カリフォルニア大学,サンフランシスコ)で新生児の肺機能を手がけていた時,研究所のカンファレンスで,新生児のsteady stateとはどういうものかということが話題になったことがあった。Bodyboxに入れた新生児は,ミルクをのませるとしばらく眠るが,何かの操作をするとすぐにあばれ,泣きわめき,排尿,発汗をし,たとえじっとしていても不規則かつ周期的な呼吸をする。私たちは,ねむってくれるまで何時間もじっと待つことが多かった。そうすると今度はポリグラフの調子が変ってくる。それかといって薬物で鎮静させると条件が変るのでそれもできない。私たちはいつも成人を扱う研究者をうらやんでいた。こうした辛酸をなめながら,新生児のsteady stateとは結局non-cryingstateにすぎないとしか言えなかったのである。私は今でもこの問題を考えている。肺機能ばかりではない。心音図,心尖拍動図,頸動脈波,肺動脈波などでも,体動や呼吸の絶えざる干渉を除外することができないまま読まなくてはならない。成人のように,「しばらく息をとめて」とれればどんなによいだろうと思わない日はない。
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