Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
肺塞栓とは,主として血栓,脂肪,空気,腫蕩組織,羊水などが肺血管床を閉塞して生ずる病態であるが他に肺血管内での血栓形成にもとづくものも含まれるので欧米ではpulmonary thromboembolismと称しているものである。本邦ではこれを肺塞栓症と総称し,このうち組織壊死を伴うものを肺硬塞としている。従来,本邦での発生頻度はきわめて低く欧米に比して約1/10程度とされ1),一般的に臨床家には稀な疾患と考えられてきた。しかしながら,従来の本症への関心は必ずしも高いものではなく,欧米に比してその検討方法に詳細さの欠けていた点も否めない。また一方,近年の食生活など環境因子の変化に加えて医療面における新しい進展,即ち種々の経静脈的治療手技,種々の薬物療法,さらにICU,CCUなどの集中管理治療システムの普及により,あらゆる分野で延命効果がもたらされた一方,"重症臥床状態のままの延命"という事態も激増した。かかる状況は塞栓発症因子を多く包含しているものであり,したがって今後,本症の発生は著しく増加する可能性をもっており,従来の"本邦における比較的稀な疾患である"という観念はぬぐいさるべき時代にきている。
Pulmonary thromboembolism was studied in 200 sequent cases over 60 years of age autopsied from 1973 to 1974 in Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital (YOIKUIN). The investiga tion was performed on Freimann's method. The result disclosed 27 cases of pulmonary throm boembolism (13.5%) and 8 cases of lung infarc tion (4.0%). In the whole series, there were 33 emboli, among which 12 lodged in right lower lobe, 7 in the stem of pulmonary arteries, 6 in left upper, 5 in left lower and 2 in right middle lobe.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.