呼と循ゼミナール
心臓性ショック(III)—開心術後低心拍出量症候群の発生機序に関する一考察
井島 宏
1
,
堀 原一
1
1筑波大学臨床医学系外科
pp.964
発行日 1976年11月15日
Published Date 1976/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202974
- 有料閲覧
- 文献概要
開心術後低心拍出量症候群(以下LOS)の発生機序は,代表的な心臓性ショックである急性心筋梗塞後のショックとは若干異なっている。表に示したのは,著者らの実験結果1,2)をも含めて,心筋梗塞後ショックと出血性ショックならびにLOSの発生に最も大なる影響を与えているであろう,通常の開心術における人工心肺による体外循環中の血行動態を比較したものである。この表で明らかなように,体外循環中の血圧や血流量は,心筋梗塞の場合よりも,むしろ出血性ショックに酷似している。
開心術における体外循環中は,心臓と肺はbypassされ,心房心室とも虚脱に陥っていることから,心臓周辺の伸展受容器への刺激は皆無といってよい。このことは,伸展受容器に対しては出血性ショックと同じかあるいはそれ以上に悪い影響を与えられていると考えられる。また,低圧系のみならず高圧系圧受容器に対しても,体外循環中の血流が非拍動流または非常に脈圧の小さな拍動流であることが,神経反射性に交感神経性末梢血管収縮を強める原因になっている。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.