巻頭言
研究領域の分化と総合
福原 武彦
1
1東京慈恵会医科大学第二薬理学教室
pp.955
発行日 1975年11月15日
Published Date 1975/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202825
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近年の医学研究領域の多様化,学際的研究分野の拡大の傾向にはいよいよ著しいものがある。呼吸,循環機能の研究をふくむ生理科学Physiological Sciencesにおける研究領域の細分化もまたその例外ではない。限定された狭い領域で研究を深あていくという,近代自然科学研究の進歩にともなって形成された,この標準的研究動向は応用自然科学としての医学にもおこる必然的なパターンであるともいえよう。近代の基礎医学は「森を見て木を見ず」とのいわば古典的,記述的立場に対するアンチテーゼを指導理念として目ざましい発展をとげてきた。しかしながら,「木を見て森を見ず」の愚行もまたさけられねばならない。
一般に,生理科学の研究においては生体の構成単位としての細胞ならびに細胞構成要素をめぐる基礎過程のメカニズムの追究に重点がおかれるために,ややもすればその細胞の所属する生体の機能系というシステムのなかでの細胞の機能的役割にたいする考察が充分になされない傾向が強まりつつあることも否定できない。研究分野の細分化と研究対象の分析レベルの微細化だけで生体の真の姿に近づきうると期待することはできない。
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