世界の波
アイゼンハウアーの巻き返し作戦
末松 満
1
1朝日新聞
pp.48-49
発行日 1953年4月10日
Published Date 1953/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200496
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アジアの戦いはアジア人にやらせよう--これはアメリカ新大統領アイゼンハウアー元帥の選挙演説以来の合言葉であることは,先刻みなさんも御承知であろう。こんな言葉がなぜ出て来たか,もう一度考え戻していただきたい.
アメリカには民主党と共和党の二大政党が対立し,民主党は国際主義,共和党は孤立主義を伝統的に唱えて来た.ルーズヴェルトやトルーマンが,ヨーロッパ諸国へ経済的にも軍事的にも協力を惜しまず,「ヨーロッパが栄えればアメリカも栄える」との政策をとつていたのは国際主義であり「まず何よりもアメリカ自体を」というのが孤立主義の根本観念である。アイゼンハウアー新大統領は,共和党から選出はされたが,実はほんの先ごろ迎えられた婿養子だから,それほど孤立主義に固まつてはいないが,彼と本家相続を争つた共和党生えぬきタフトが今なお健在で,本家の帳場に坐つているうら,アイゼンハウアー大統領としては,やはり孤立政策をおろそかには出来ない.すなわち,ヨーロッパやアジアから,なるべくアメリカ人を引揚げねばならないのだ.
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