呼と循ゼミナール
呼吸不全診療にあたっての問題点
長野 準
1
1国立療養所南福岡病院
pp.134
発行日 1975年2月15日
Published Date 1975/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202721
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呼吸不全はrespiratory failureの邦訳であって,その概念や定義については前に述べた。そこで呼吸不全の理想的根治療法を考えてみると,現実には非常に遠い将来のことであろうが,それは肺移植であると思われる。呼吸不全の原因の多くが肺の線維化と気腫化とに大別できるとしても,その病因はほとんど不明である。したがってその予防法は硅肺のマスク着用,禁煙などの段階から1歩も前進していない。肺移植が可能になる日が早いか,あるいは肺の線維化,気腫化の原因が解明され予防策ができるのが先か,呼吸不全根治の道はこの2つにかぎられると思う。
呼吸不全患者を現実に取扱うものとして,その診療上の問題点をいくつか考えてみよう。呼吸不全の診療には,第1に血液ガス測定は欠かせないものである。呼吸不全は,肺生理学的には肺胞低換気,シャント増加,換気血流比の不均等分布,拡散障害などによって成立つが,臨床的原因疾患は,気管支喘息,肺気腫などの呼吸器疾患をはじめとして循環器疾患,膠原病,中枢,末梢神経疾患,筋肉疾患,代謝性疾患など全身疾患が挙げられ,その慢性経過中に発症するのである。ブレオマイシン肺臓炎などは,臨床的にPao2の低下によって発見されることが多い。
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