呼と循ゼミナール
老年者心房中隔欠損症
谷口 興一
1
1東京医科歯科大学第2内科
pp.502
発行日 1974年6月15日
Published Date 1974/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202639
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先天性心疾患の中で左—右短絡疾患は比較的予後が良いとされている。これら心疾患の経年変化については古くから論議されていることで,決して新しい問題ではないが,手術適応を決める資料としても大切な事柄であろう。しかしながら老年者左—右短絡の中でも動脈管開存症や心室中隔欠損症は稀にしかみられないが,心房中隔欠損症(以下ASD)は比較的よくみられる。そこで当第二内科教室で心カテーテル検査および呼吸機能検査を実施したASD 65例(年齢は5〜86歳)についてその成績を検討し,心肺機能の特徴をまとめてみる。異論もあるであろうが,一応50歳以上を老年者ASDとすれば,症例は17例である。
血行動態にかんしては,右房圧,左房圧,肺動脈圧および肺動脈楔入圧いずれも若年者と老年者に差がみられない。心房中隔欠損症の終着駅は一般に肺高血圧と考えられているが,著明なものはない。しかしながら肺動脈主幹の拡大は若年者に比べ老年者ASDが著しい。右心不全を合併するか,あるいは肺動脈塞栓症を合併すると著しい肺高血圧を呈し,ときには死の転帰をとる。右室—肺動脈収縮期圧較差は若年者において著明であり,老年者ではほとんど差がみられず,全例10mmHg以下である(図1)。これに対して肺動脈楔入圧—左房平均圧較差は若年者群に比べ老年者ASD群が増大している。肺血流量および左—右短絡量は老年者群と若年者群で全く差がみられず,肺血管抵抗も同様である。
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