特集 血流
Pulsatile Blood Flow
沖野 遥
1
Haruka Okino
1
1北海道大学応用電気研究所メディカルトランスデューサ部門
1Medical Transducer Division, Institute of Applied Electricity, Hokkaido University
pp.25-31
発行日 1972年1月15日
Published Date 1972/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202342
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心脈管内の血液の動きが脈動リズムに従っていることは古来生死の判定の根拠になってきた。脈が触れないことから心臓ポンプの停止を判定し,送血の停止,代謝の停止中断によって死ぬと考えてきた。しかし最近の学問の進歩は低体温による代謝の抑制というような延命手段を実用化しつつあるので,脈の強弱やその頻度の変化は必ずしも生死判定の確実な証拠にならなくなってきた。
この脈動は血管壁の弾性と内圧の脈動とによって発生するわけであるが,ただし圧があっても血管内を血液が末梢方向へ流れるとは限らない。この圧と流れの関係は脈動の有無によって大変状態が異なる。すなわち脈動のない川の流れなどではダムで流れを塞き止めると,貯水に伴って水圧は高くなるが,水は停滞して流れなくなる。一方血圧と血流のように脈動運動があると,特に導管壁に弾力性があると末梢端が閉塞された盲管であっても盲管内の血液は脈動に伴って盲管を伸縮する方向に流動する。流動するといったのは末梢方向への実効的な血液の流れはないが,管内には右往左往する血液の動きはあるという意味である。すなわち行先の閉じた血管でも閉塞部位より中枢側では脈も触れるし血液は脈動性に動く。低血圧ショックに収縮剤を投与して脈の触れ方がよくなったと安心するのはこのような状態に相当する。
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