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講座
生体膜の能動輸送
Active Transport.
吉村 寿人
1
Hisato Yoshimura
1
1京都府立医科大学第1生理学教室
1The 1st Dept. of Physiology, Kyoto Prefectural University of Medicine
pp.961-965
発行日 1965年12月15日
Published Date 1965/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201526
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はじめに
ここに生体膜というのは,細胞膜や細胞の集まってなす組織によって形成せられる膜のことである。この生体膜の物質輸送には何としても細胞膜の働きが主役を演ずるものであるから,ここには主として細胞膜に見られる物質輸送について述べる。
さて細胞はその周囲を取りまく細胞外液との間に物質代謝を行なって生命を続けているのであるが,その場合,細胞内液の組成は常に細胞の健常な働きを維持するために一定に保たなければならない。また細胞の物質代謝とは細胞が細胞外液中より栄養素をとり,細胞内に生じた老廃物質を外液中に捨てることを意味するのであるが,こうした細胞に有用な物質(栄養物)と不用なもの(老廃物)とを区別する役割は何が果すか,また細胞内組成を一定に保つことを誰が管理し調節するのか。これは細胞の生命現象の基本的な問題であるが,そうした働きをなすものが細胞膜であって,こうした物質代謝や細胞内液調節のための細胞膜を介する物質の動きのことをここに物質輸送と述べたのである。膜を介する物質の動きのことは古典的物理化学では膜の透過性によるものと理解せられていた。しかし透過性とは膜が物質をどの程度に透過させるかという性質を現わしたものであって,この場合に物質の動きを起こさせる動機となるものは膜の両側におけるその物質の化学ポテンシャルの差(または濃度の比)である。
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