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はじめに
生体における肺の働きは,体の末梢組織より戻ってきた静脈血を肺におけるガス交換により酸素化して動脈血とすることにある。しかしながら,心臓より肺に送り出された血液はすべてガス交換にあずかるわけでなく,一部の血液は肺毛細血管を介してのガス交換に参加しないまま,全身循環に入り,これが肺生理学的シャントまたは静脈血混合といわれている。このような肺生理学的シャントは正常人でもある程度存在しているが,肺疾患その他いろいろな条件が加わることにより増加し,ために動脈血中の酸素分圧の低下がおこり,いろいろと難しい問題が生じてくるのである。
今回は肺生理学的シャントに関するこれまでの知識を整理しながら,主に基礎的なことについて概説しようと思う。
さて肺生理学的シャントの命名法に関して,今までの成書,文献等をしらべてみると,physiological shunt, venous admixture, anatomical shunt, constant shunt, capillary shunt, alveolar shunt, variable shunt, pathological shunt, shunt-like effect等いろいろいわれ,多少混乱をきたしている感がある。とくに本文の主題である肺生理学的シャントphysiological shuntには,不幸にも二つの意味があり,一つは生体が正常時に有するシャントを意味し,他の一つは全てのシャントをひっくるめたものをいい,venous admixtureと同義と考えられている。生理学的死腔の場合と同じように考えて,シャントの場合もphysiological shuntを後者の意味で解釈し,その中にconstant shunt, variable shuntの二つが存在し,前者にはanatomical shunt,後者にはcapillary shuntまたはalveolar shunt, shunt-like effect等が含まれると考えた方が良いようである。なおpathological shuntというのは,あまり使用されないが,正常人でみられないようなanatomical shuntが存在する場合を示すために,使用されることがある。
以下肺生理学的シャントを構成する因子について説明する(図1)。
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