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はじめに
心筋硬塞ないし狭心症を主とした,つまり冠動脈のアテローム硬化に基因する,虚血性心臓病は,わが国においても最近急速に増加しつつある疾患である。これは社会的に重要な地位を占める人達に多い疾患であるだけに,その社会復帰が遅れたり,不十分であるなら,これは本人のみならず社会的あるいは国家的損失といわねばならない。
従来から,心臓病の治療の第一は安静であるとされてきたが,虚血性心臓病において狭心症ないし各種の訴えが,安静により解消するあるいは軽減することは素人でも知っている治療の第一歩であることに異論はない。しかし問題は,安静により症状は消失するかもしれないが,病気そのものが安静により改善することはないということである。虚血性心臓病の場合,安静をとることで消費カロリーが減少し,気分が改善され食事がすすめば,肥満は一層強まり,この疾患の原因であるアテローム硬化は,ますます進行する可能性がある。つまり,冠動脈のアテローム硬化によりひきおこされた心筋への血液供給のアンバランスを根本的に是正することはできない。ところが,冠動脈にアテローム硬化があるとしても何ら愁訴なく,致命的でもないこともしばしば病理解剖で発見される。これはある分枝の閉塞があっても,他分枝からの副血行路がきわめてよく発達しているからである。また一方,安静による全身各臓器の癈用性萎縮も考慮する必要が出てくる。
このような見地より,著者木村は,昭和31年日本内科学会総会におけるシンポジウムで,「狭心症の治療」と題して「内科的外科療法とも称すべき積極的運動療法が,副血行路の発達をうながすであろうことを期待して,心筋硬塞患者に比較的早期に,2階段昇降試験を行ない冠不全をおこさないぎりぎりの運動置を求め,一日何回もその運動量を負荷すること」を発表した。その後,積極的運動負荷療法について,例数を重ね,その効果を十分に吟味評価できるようになった。
ここに,著者らが行なっている積極的連動負荷療法を中心とした心筋硬塞のリハビリテーションについて述べてみたい。
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