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はじめに
超音波は物理的性質として,一般に鋭い指向性(集中する性質)をもち,液体,固体など密度の高い媒質中を伝播しやすく,音響インピーダンス(媒体の密度とその媒体の音速との積)の異なる境界面では反射,屈折,透過し,光と似た性質を示す。そしてパルスとして反射法に用いると距離分解能がよく,近距離からの反響もよく分離して識別することができ,また,音速が既知であれば反射体までの距離が実測できる。それ故生体のごとく,軟性組織と血液,リンパ液など液体で満たされた媒質中はよく伝播し,レ線法の弱点をカバーしうる性質を示す。したがって生体では適用しうる範囲は広く,最近では臨床各科の領域で実用されてきている。循環器領域への超音波の診断的応用は1949年Keidel1)が,次いでRushmer2)が連続超音波による透過法を実験的に心臓計測に応用した報告がみられるが,臨床的に実用されるようになったのはごく最近である。臨床診断上応用される超音波には連続超音波とパルス超音波とがあり,ともに反射する性質を利用している。循環器領域で現在臨床的に実用されている方法としては(1)里村3),吉田4)らにより開発された連続超音波によるドプラー法,(2)Edler & Hertzにより開発されたパルス超音波によるUCG (ultrasonic cardiogram)法5)6)および(3)海老名,田中,菊池らによって開発されたパルス超音波による超音波心臓断層法7)〜9)と一連のその応用法10)〜12)である。(1)の方法は音のドプラー効果を応用したものであり,弁の開閉速度や時相関係の解析,血流速度測定に用いられている。(2)の方法はA-scope像を輝度変調した方法で,菊池らはtime position indication (T. P. I.)法13)と称しており,主として弁の運動解析に用いられていた。(3)の方法はソーナー技術の応用であり,二次元表示により心臓構造を断面図的に示す方法で心臓の解剖学的構造,形態あるいは動態の非観血的測定手段として用いられている。このうちここでは超音波心臓断層法と一連の応用法について紙面の許す範囲内で述べることとする。
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