今月の表紙
肝臓の超音波断層写真
和賀井 敏夫
1
1順大外科
pp.254
発行日 1969年3月10日
Published Date 1969/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202572
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生体組織の構造の映像法として近年超音波という一種の波動を用いる方法がさかんに研究されるようになり,これが臨床診断法としても種々の貢献をなすまでに発展してきた.この超音波生体組織映像法の原理としては現在,パルス反射法が多く用いられ,図は手動式の接触型複合走査法装置を用いて撮影した肝臓の断面象である,図の上縁は体表を示し,図1は肝硬変,図2(表紙写真参照)は転移性肝癌の像で,超音波断層写真とよばれている.二れらの像はブラウン管上で残象として直接見ることができろので,種々の診断がその場でつくこともある.
これらの超音波断層像の本質は,生体各組織の音響的な性質,特に音響インピーダンス(抵抗の一種)の差を現わしたものである.図1の肝硬変の超音波断層写真では肝内部より微細な点状像が多数みられ,図2の肝癌では輝度の強い限局した像が1つのかたまりとして現わされている.これらの超音波断層像の特徴としては,生体組織特に軟部組織の映像能力がずぐれていることがあげられる.すなわち従来生体組織の映像法として多く用いられてきたX線などと比べ,造影剤のごとき補助剤を用いないで,自然のままの生体の構造を描写できることで,踵瘍の良性・悪性の分類診断も可能となってきた.さらに診断に用いる超音波パルスは,生体に無害である点も,臨床使用にあたって大きな利点といえよう.現在超音波断層写真装置として種々の方式のものが開発されている.
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