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はじめに
Ciba Guest Symposium (1959)では,肺機能障害について,つぎのような見解を提示した。
respiratory impairmentとは,ある人の肺機能が同年齢の正常人,あるいは対照と比べて明らかな低下をみとめることをいう。
respiratory insufficiencyとは,respiratory im—pairmentに息切れが加わったときをいう。
respiratory failureとは,respiratory insuffici—encyをみとめる人に,動脈血検査をして,動脈血O2分圧と動脈血CO2分圧が正常範囲外にあるときをいう。
respiratory failureを呼吸不全(肺不全)と訳すとすれば,呼吸不全(肺不全)は肺胞におけるガス交換障害と考えられる。肺胞におけるガス交換の障害は,つぎの4項目にまとめることができる。
(a)換気の異常〜肺胞低換気
(b)換気・血流比の異常
(c)肺胞膜透過性の異常〜拡散障害
(d)動静脈シャント
これらは,すべて動脈血O2分圧を低下させる。つまり低O2血症の原因となる。しかし,CO2の蓄積,高CO2血症の原因となるのは,肺胞換気量の減少である。
換気・血流比が小さいと,つまり血流に対するガスの分布が均等でないと肺胞換気量が正常か小さいときは動脈血CO2分圧は上昇する。単なる拡散障害では決して動脈血CO2分圧は上昇しない。動静脈シャントがあると,動脈血CO2分圧はわずかに上昇することがある。要するに,動脈血CO2分圧を左右するのは肺胞換気であり,肺胞低換気は動脈血CO2分圧の上昇で特徴づけられる。
動脈血CO2分圧が急に著明に上昇すると,脳血管の拡張,脳圧の上昇がおこり,頭痛,めまい,指南力不明,意識混濁,麻酔状態となる。また,高血圧,頻脈,どうき,発汗など循環系の異常もおこる。しかし,慢性化したときの症状は,急性の動脈血CO2分圧の上昇に比べて,はるかに軽い。健常人が10%CO2混合ガスを3分間吸入すると意識を失うことがあるが,1年以上も動脈血CO2分圧が100mmHg以上の状態がつづき,しかも精神的に平気であった例があるという。したがって,自覚症状ではあてにならず,慢性肺不全のばあいは動脈血検査がきわめて大切だということになる。
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