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はじめに
あらゆる化学反応が溶媒のpHによって影響をうけることから考えても,複雑な化学反応の場である細胞内のpHが生命の状態,生死に重要な役割をもつことは当然のことと考えられる。細胞内のpHを測定しようという試みはかなり古く,今世紀のはじめ頃から行なわれ,いろいろ方法が考えられているが,いずれの方法にも方法論的に問題があり,ごく最近までは信頼性のあるデータが得られなかったといっても過言ではない。
近年弱酸の膜平衡を応用した方法として,DMO法が開発され1),各種組織細胞の細胞内pHに関して数多くの報告がなされている。一方,微小電極法も急速に発達し,かなり信頼できると思われる細胞内液pHの測定値が報告され2),過去に得られた成績との間に大きな差異が発見され話題を呼んでいる。われわれもDMO法による細胞内pHの測定を検討しているが,現時点における細胞内pHの測定法,およびその測定値のもつ意味と限界について考えてみることは意義あることと思われる。
また,酸・塩基平衡障害の代償に,腎,酸などとともに組織が重要な役割をもつことは,1917年すでにVan Slykeらにより指摘されており3),Pittsらの腎臓を易U除した犬を用いた研究によって各種酸・塩基平衡障害のさいのtissue bufferingの大きさが定量的に求められている4)。しかしこれらの成績は間接的な方法によったもので,酸・塩基平衡障害に対する組織細胞の役割を明確にするためには,細胞外液pHの変化に対する細胞内pHの変化を直接測定することが必要である。最近・実験的および臨床的にこのような研究がつぎつぎと報告されているので酸・塩基平衡障害に対するtissue buffe—ringについても考えてみたい。
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