巻頭言
臨床生理学講座の設置を要望する
望月 政司
1
1北海道大学応用電気研究所生理部門
pp.91
発行日 1967年2月15日
Published Date 1967/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201735
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現在,医学において医学教育および研究の場からとり残されたいくつかの領域があげられる。内科をはじめとする臨床医学者および生理学者の立場から共通に考えて,その領域の第一に臨床生理学をあげるのもあながち不当とも思われない。ここ数年来日本生理学会のなかに生理学将来計画委員会ができ,その委員会で臨床生理学講座の設置を必要と認め,要望書を作成している。この書類の冒頭にも,「今日の臨床医学は生理学の基礎知識なくしてはこれを習得かつ実地応用することが困難な時代になっている」と説かれている。また,一部の大学では臨床中央検査室をもって臨床生理学講座の代用にあてようとの企てもあるが,しかし検査室は病院運営に必要な部門であり,教育の場とするにはふさわしくない。
この講座の新設が議題に出たとき,一部生理学者の間で病態生理学と臨床生理学との差異が論議された。事実,それら両者の間にはとくに大きな差異があるともみとめ難いが,あえて私見を述べると,病態生理学は病人の生理機構の正常人との差異を生体として考え,病人と正常人の間の比較生理学的な立場にあり,調査的な学問分野であるように思える。この学問は,その研究手法が生物学的方法を用いる点で,臨床医家の最も得意とする分野で,現在内科診断学はその上に立っているといっても過言ではなさそうである。
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