オピニオン
こんな検査室があるといい―臨床からの要望
川上 康
1
1筑波大学(臨床病理学/代謝内分泌内科)
pp.486
発行日 2003年6月1日
Published Date 2003/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101428
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■環境の変化―検査室と生活習慣病
高齢化や経済不況の影響で,検査室においても経営を考慮した医療が求められ何かと世知辛い今日この頃です.こうした検査室を取り巻く環境の変化と最近話題になっている生活習慣病には共通する点があると思います.
生活習慣病について述べますと,日本人の食事内容が欧米でみられるような高カロリー,高脂肪食へと変化し,さらに運動量の低下が加わった結果,エネルギー収支は摂取過剰となり体内にエネルギーが蓄積するようになりました.体内へのエネルギー蓄積によって,欧米型生活習慣には適応しにくい遺伝的素因を持つ人々においては,糖代謝や脂質代謝の異常,さらに高血圧が生じます.生活習慣病になりやすい遺伝素因というと悪い遺伝子のようにも思いがちですが,飢餓が日常的であった時代や,もしも将来食糧不足が訪れた場合には,逆に生命維持にとって有利な遺伝子となります.こうした環境の変化の中で変わらず大切なことは,エネルギーを必要なだけ摂取し余分には摂らないことであり,遺伝子の問題は普遍的なものではありません.
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