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講座
胎児心電図(1)
Fetal Electrocardiography (1)
小林 隆
1
,
武井 徳郎
1
,
橋本 武次
1
Takashi Kobayashi
1
,
Yoshiro Takei
1
,
Takeji Hashimoto
1
1東京大学産科婦人科学教室
1Obstet. & Gynec. Dept. of Tokyo Univ.
pp.209-215
発行日 1963年3月15日
Published Date 1963/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201187
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I.はじめに
従来,臨床診断の目的をもつて,生体の活動電位をとり出す装置としては,心電計,筋電計,脳波計などが知られている。これ等は現状においては,ほぼ完成した装置であつて,実用上一応満足すべき性能をもつものとみなされ,特に使用頻度の高い脳波計や心電計については既に日本工業標準規格が発表されている。
胎児心電図は心電図の一種であるが,胎児は母体の子宮腔内において生活を営んでいるもので,その記録は羊水,羊膜,子宮壁,腹膜腔,母体腹壁などを通じて記録される場合と経膣的に誘導されることがある。いずれの場合も一般の心電図のように体壁上から直接誘導するものに比し,その電位差は極めて小さく,多く50μV以下である。又その検査目的もその電位差がきわめて小さく,かつ雑音の混入が多いため,多く波形の判読には到らず,単に心室波の存在の証明,棘高の測定などに止まる。以上のように胎児心電計は一般心電計の概念からはきわめて遠く,その増幅度や周波数特性においてはむしろ脳波計に近いものがある。勿論胎児心電図を各種の応用目的に応じ,良好な波形を得るためには専用装置を用いるのが良く,その実際の技術もかなり独特なものがあるので胎児心電図の概説を始めるにあたり,今回は主としてその増幅器について検討を加えることにしたい。
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