巻頭言
循環器と生化学
吉利 和
1
1東京大学
pp.449
発行日 1962年7月15日
Published Date 1962/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201106
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わが国で循環器の研究ないしこの方面に関する興味をもつ人の数は相当に上つているし,また年々増加しつつあることはたしかである。これは,癌とならんで,高血圧というものが成人病の中心となつていることにもよるであろうが,戦前の循環器学会やその機関誌であつた日本循環器病学会誌を見ていると,まつたく今昔の感にたえない。しかし,一般医家にきいてみると,循環器学会という学会は,はなはだとつつきが悪いという人が多い。これを消化機病学会にくらべると,私自身もその感を深くする。消化機病専門とはいえない私でも消化機病学会の演題を見れば大体どういうことかわかるし,またその講演もよく理解できるものが多い。ところが循環器学会では,何のことやらわからないという講演がかなりあることはたしかである。このことはどう考えたらいいのであろうか。おそらくこれは研究方法の種類とか多様性とかに関係するのではあるまいか。
消化機病学会での研究方法には,形態学的なものと,生化学的なものが圧倒的に多いようである(疫学的,臨床病理的なものもかなりあるが)。前者は直観的であり,説明をうければなるほどと,その場で一応は納得する。納得できない人は,多少その方面の知識のある人である。一方生化学的なものは,消化器に限つたことではなくて,生化学的知識をもつておれば,消化器についての生化学的研究も,たとえ専門はちがつても一応理解ができるのである。
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