特集 悪性腫瘍
生化学
藤村 真示
1
1千葉県がんセンター研究所生化学研究部
pp.683-692
発行日 1975年10月20日
Published Date 1975/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208253
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I.はじめに
与えられた題目は,"発がん機構と治癒機構―生化学―"ということであるが,発がん機構はまだ解明されておらず,生化学といつても研究の一手段に過ぎず,発がん機構についても生化学だけで解決のつく問題だとはもちろん,考えてもいないが,ここでは,筆者が従来,多少なりとも手がけている化学発がん物質による実験動物における発がん過程と,発生したがんを材料に,これまでいわれている発がん機構に対する考え方を生化学の立場から筆者なりにまとめてみた。
発がん機構は未だ不明とはいうものの,動物実験では,おそらくヒトでも同様の原因が考えられるが1),化学物質や,物理化学的要因(たとえば放射線など)やウイルス感染などで,がんを誘発することができ,自然発生のがんも実験に用いられる。なかでも,化学発がん物質は,化学物質としてその構造が明らかで,発がん過程を物質のレベルで分析,追跡できる。
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