特集 血管造影法
巻頭言
血管撮影
木本 誠二
1
1東京大学
pp.523-524
発行日 1961年8月15日
Published Date 1961/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201008
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広義の血管外科が実地臨床上ごく普通の手術的治療となつてきた現在,血管撮影は診断上極めて重要な操作となつて広く普及されているが,これには技術的な面での進歩のほかに,造影剤の改良が最も大きい貢献をしていることは言うまでもない。私どもが教室に入つた30年前には,専らヨードナトリウムの濃厚溶液が使用されており,刺激が極めて強烈で全身麻酔や脊髄麻酔を必要としたことを記憶している。トロトラストも殊に肝脾撮影などによく使用されたが,20年ばかりを経過した最近になつて癌の発生が見られており,文献にも乳癌や腎癌を生じた報告があるが,私も肝癌の発生した1例を手術によつて確かめた経験がある。これは永久的に組織に沈着するトリウム微粒子からの放射能によるもので,私の例も30年以上経つているのに肝臓も脾臓も極めて鮮明に造影されていた。
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