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はじめに
心臓血管撮影法—angiocardiography—(以下ACG法と略記する)は心臓内腔に流した造影剤をX線撮影により観察して心臓と大血管の形態と血行動態とを診断する方法であることはいうまでもないが,循環器疾患診断法の1つとして近来有力な地位を占めるに至った。心臓内腔を直接観察できる点では広く実用化されている唯一の方法といってよく,近年の心臓外科の発展とは密接なつながりを持っている。またACG法の進歩と発達はX線機器の技術的進歩を土台としているが,各種の心臓カテーテル法の発展と結びついており,例えば左心系のカテーテル法が開発されることによって左心系ACG法が飛躍的に進歩することになる。もちろんACG法も唯一万能の心臓検査法ではなく,心疾患患者の診断に当っては,臨床所見,胸部X線写真,心電図,心音図など患者に負担のかからない方法でできるだけ診断を確定する心がまえが大切であり,これらの方法で診断が確定しない場合,心臓手術に当って情報量が不足している場合などに限って実施すべきである。ACG法により得られた所見を読影するにはかなりの熟練を必要とし,また1枚ずつ充分に時間をかけて慎重に読むことに心掛けないと所見の見落とし,誤読を生ずる。またACG写真の読影に際しては,他の特殊循環器検査法:ベクトル心電図,色素稀釈法,心尖拍動図法,シンチカメラ所見,心内心電図,心内心音図,温度稀釈法等を適当に取捨選択し組合せて診断の正確さを期すべきである。反面複雑な心奇形の診断や心臓弁膜の運動状態をつきとめるためには一症例に2〜3回のACG法を必要とすることも珍らしくはない。一般的にいって先天性心疾患の診断の場合,チァノーゼを呈する疾患にはACG法を,チアノーゼを呈しない疾患にはまず心臓カテーテル法が第1の適応となる。
最近では冠状動脈撮影法もかなり一般化されているが1),通常のACG法とはかなり異なるところもあるので本稿では触れないこととする。
なお紙数に限りがあり,またACG法についての解説もかなり書かれているので今回はまずACG法の歴史について述べ,次に東大病院中央放射線部で行なっている方法と実際について写真と図を主にして述べることとする。
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