巻頭言
心電図学の歴史と展開
木村 栄一
1
1日医大
pp.691
発行日 1960年10月15日
Published Date 1960/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200925
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今年の春大阪で催された日本内科学会と日本循環学会の双方で,心電図のシンポジウムが行われたことは,われわれの記憶に新しいところであり,私もまたそのスピーカーの1人であつた。心電図が,今のわが国に1つのブームのごときものをひきおこしており,実地医家にとつても大きな関心事となつていることが,心電図をとり上げることになつて動機であろう。
ところで,学会のシンポジウムのテーマとして年年に取上げられるのは,その年代の医学上のトピツクというべきものである。"心音図"とか"膠原病"などは,そいうトピツクだといつてよかろう。ところが心電図は実地臨床上にはトピツクの1つであるとしても,学問的には1960年のトピツクとはいえないのである。このことは,各演者にとつて,いかにして自分に課せられたテーマをまとめるかという点において,少なからぬ当惑を感じさせたものである。たとえばこの2〜3年間に新しい飛躍をした領域の問題であるなら,ノイエスをうることもたやすく,またそれほどでなくても啓蒙的な仕裏をなすことができる。ところが学問的にそうではないとすると,シンポジウムの演題に値するような,良い仕事をすることはなかなか困難であるからである。
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