Japanese
English
綜説
直視下心内手術のための任意心拍停止および蘇生
Elective cardiac arrest for open heart surgery.
笹本 浩
1
,
尾崎 恭輔
1
Hiroshi Sasamoto
1
,
Kyosuke Ozaki
1
1慶大医学部内科教室
pp.990-996
発行日 1958年12月15日
Published Date 1958/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200701
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近時,化学療法および麻酔学の進歩により,至難といわれていた直視下心内手術が行われしかも成功した症例の報告がかなり多数見られるようになつた。しかしその適応も手術術式もいまだ完全に確立されたわけでなく,今後の麻酔学,手術手技の進歩とともに変化するものと考えられる。ここでのべる任意心拍停止および蘇生による手術方法は人工心肺装置又は低体温法あるいはその両者の併用のもとに心臓を全身循環より孤立させ,その冠循環を全身循環より遮断して心停止剤(Cardioplegic agent)を選択的に冠循環系に注入して,心を拡張期性に停止させて,心筋の代謝を低下させ,この間に心内手術を行い手術終了後,冠循環を再開し,心を正常拍動に回復させ,正常血圧を保ちうるのを確かめたうえで,人工心肺,低体温法より解放して手術を終えるものである。
すなわち,従来直視下心内手術時に起る血行不全による変化の大なるものでしかも生命維持に最も大きな影響をもつ臓器として中枢神経系と心臓とが考えられ,これらの保護が色々と工夫されて,全身低体温法,人工心肺,選択的脳潅流法,選択的冠潅流法,人工細動下手術などの方法が行われてきた。この任意心拍停止による方法は中枢神経系は人工心肺潅流,低体温法により保護し,心筋は弛緩性に心拍停止を起して心筋の代謝を低下させ,この間に心内手術を行い,手術操作を簡易,かつ安全ならしめんとするものである。
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