Ebstein氏病の1剖検例

Ebstein's Disease, Report of a case with autopsy findings.

　1866年Ebstein^1）によつて三尖弁口が右室腔内に下方偏位している特異な心奇型が発表されて以来，本奇型はEbstein氏病と称せられている。本奇型の三尖弁前尖は大体正常の位置に近く，少なくとも部分的には線維輪に附着しているが，後尖及び中隔尖は右室壁に附着し，小さくて変形している。これ等の弁尖が小さいために，三尖弁閉鎖不全を形成することが屡々である。右室は異常な三尖弁によつて2つに分けられ，弁上部は機能的には右房に属し，弁下部のみが右室として働く。弁上部の右室と右房は壁が薄く，高度に拡張している（第1図）。

　卵円孔開存は本奇型に高率に合併して居り，Engle^2）によれば23例中19例に卵円孔開存乃至心房中隔欠損が存在していたと云う。