巻頭言
抗動脈硬化剤について
斎藤 十六
1
1千葉大学
pp.3
発行日 1958年1月15日
Published Date 1958/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200576
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最近「抗動脈硬化剤」が内外で売り出されている。動脈硬化をおこしにくくする目的と,できあがつた動脈硬化をもとどおりにする目的とがある。しかし,すくなくとも,ヒトの場合,どのくらい成功するか,どうか,今後の検討を必要とする。不完全とはいえ,「制癌剤」よりも,さらに,うたがわしい点が多い。動脈硬化のなりたちさえ,まだ,よくわかつていないところが多い現在,すくなくとも,「抗動脈硬化剤」といわれるものについては,1.持続的に血清全コレステロール量をへらすこと,2.血清全コレステロール量のへりが,ヒトの動脈硬化性傷害を,臨床的に副作用なく,もとどおりにするか,どうかを調べなければならない。これらの目的で,コリン,ベタイン,メチオニン,イノジトール,レチチン,甲状腺剤などが用いられている。そのうちには,健康保険で厚生大臣が使用を許していないものもある。コリン類は,たいてい,1gを1日3,ないし4回,内用し,1ないし,24カ月つづける。ふえている血清コレステロールは,尋常の上界ぐらいになることもある。心硬塞後,退院したヒトに使つて,経過をみたという報告もあるが,発作が2カ年ぐらいなくても,それで,効果があったとは,いいにくい。なぜなら,コントロール群には,このくらいの間,無事故で,すごすヒトが,あまりに,多いからである。しかし,血清コレステリン量に無影響の場合もある。
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