トピックス
酒は飲むべきか?—アルコールとHDLの抗動脈硬化作用をめぐって
木下 安弘
1
1千葉大保健管理センター
pp.529-530
発行日 1982年6月1日
Published Date 1982/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205397
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酒は飲め飲めと民謡にうたわれているアルコールは,1960年以降,世界的にその消費量が増え続け,第1位のポルトガル,2位のフランスを筆頭に,日本も23位に入っている.他方,また,狭心症,心筋梗塞といった心臓の病気(虚血性心疾患)も増え続け,その原因として高コレステロール血症,高血圧,タバコが心臓の動脈(冠状動脈)硬化症の3大要因に取りあげられた.その結果,血清総コレステロールとトリグリセライドの測定が,一時期全盛を極あ,それが今日,臨床検査法の一つとして定着した.しかし,幸いこの方面の研究が進み,超遠心法,電気泳動法,沈殿法,カラムクロマトグラフィー,免疫学的方法などにより血中脂質と結合する血漿リポ蛋白の測定が,次第に日常の臨床検査にも取り入れられるようになって,事態は一歩前進した.
さて,アルコールは,これまで心臓の筋肉自体に悪い作用を及ぼし,心不全や不整脈を起こし,突然死にも関係するといわれてきた.また,身体の幹部に脂肪を沈着させて肥満をつくり,高コレステロール血症と高血圧を促進するから,狭心症や心筋梗塞の危険因子につらなるとされてきた.しかし,反面,なぜか昔から慢性のアルコール中毒患者には動脈硬化症の軽いことが知られており,加えて1974年にKlastkyらがアルコール飲用者では,心筋梗塞の危険が少なくなるといい始めてからは,にわかにこの問題が,愛飲家を弁護するかのように精彩を帯びるに至った.
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