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2015年,EMPA-REG outcome試験は2型糖尿病患者にエンパグリフロジンを投与する群と投与しなかった群と比較して,心血管複合エンドポイント(心血管死,非致死性の心筋梗塞および脳卒中)が有意に減少したことが報告され,話題となりました.しかしこの試験では,エンパグリフロジン投与群で短期間に心不全による入院と心不全死の発症を減少させたものの,エンパグリフロジンが動脈硬化性疾患を予防しうるかどうかまでは不明でした.本研究は,エンパグリフロジンの抗動脈硬化作用について検討し,その機序を明らかにすることを目的とした基礎実験です.
動物は,7週齢雄性の,動脈硬化モデルマウスであるApoE -/- マウス(n=48)を用いました.高脂肪食(1.5g cholesterol, 43%炭水化物,41%脂質)を投与して飼育し,20週齢で4群,コントロール(C)群,グリメピリド0.1mg/kg(G)群,低用量エンパグリフロジン1 mg/kg(LE)群,高用量エンパグリフロジン3mg/kg(HE)群に分け,28週齢までそれぞれ薬物を投与しました.投与前後でdual energy X-ray absorptiometry(DXA)法により体脂肪量を測定し,投与終了後には8時間の絶食後に血液サンプルを採取,大動脈弓と大動脈弁部分の動脈硬化巣や,肝,脂肪組織の脂肪沈着を観察しました.また,内臓脂肪組織や肝臓のインスリン抵抗性や炎症に関与するmRNAおよびタンパクの発現を検討しました.細胞実験では,ラット大動脈平滑筋細胞(RAoSMCs),ヒト臍静脈内皮細胞(HUVECs)にエンパグリフロジン0.1〜100μmol/Lを添加し,細胞増殖および細胞の遊走能を評価しました.
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