Japanese
English
綜説
新しい心電図とベクトル心電図の動向—主としてBurger三角形について
Recent Advances in Electrocardiography and Vectorcardiography:On the Burger Triangle.
佐野 豊美
1
Toyomi SANO
1
1東京医科歯科大学
1Clinical Physiology, Tokyo Medical and Dental University School of Medicine
pp.830-839
発行日 1956年12月15日
Published Date 1956/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200439
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Ⅰ.心電図理論構成の2つの方向
心電図理論は一応体系が整い,現在はその反省の時期にあり,新しい前進が胎動しつつある。現在までの心電図理論は心電図解釈という現実に差し迫つた実際的要求にかられて,充分でない実証的基礎より多くのスペキユレーシヨンを加えて,無理やりにでつちあげた感がある。従つて多くの理論家は簡易化した物理学的考察と数式を利用して結論を急いだが,その実証的基礎に対するきびしい生理学的批判態度に欠ける所が多い。心電図理論が従来純粋の生理学者から白眼視されて来た所以は茲にある。実際電気生理学のきびしい批判的精神は臨牀家の予想を越えるものがあり,物理学や化学と同様な確実な事実を掴んで始めて前進せんとする態度は大いに学ぶべきである。凡そ心電図理論の構成には2つの方向がある。第一は心筋線維の電気発生理論より出発して,心臓全体の電気現象の機序解明に努め,これと人体なるvolume conductorとの関係を究め,心電図棘波の説明に資する方向である。これは正統的な研究方向であり,発生機序の全部を明かにするためには究極にはこの筋で体系化されればならないのであるが,上述の批判はこの方向における現在の段階に最も向けられる。実は細胞自体の電気発生に関してすら論議があるどころか,この問題こそ現在の電気生理学の中心問題なのである。
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