座談会
心筋梗塞—昭和30年11月28日,於本社
木村 栄一
1
,
村上 元孝
2
,
斎藤 十六
3
,
笹本 浩
4
,
卜部 美代志
5
,
上田 英雄
6
1東北大学医学部
2群馬大学医学部
3千葉医科大学
4慶大医学部
5金沢医科大学
6慈恵医科大学
pp.270-279
発行日 1956年3月15日
Published Date 1956/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200348
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上田 今日の座談会の題は「心筋梗塞を中心として」ということです。近頃アイゼンハウアー米大統領等の有名人が心筋梗塞になつて,医師のみならず一般民衆の興味や関心が増え,或は心電計が普及して実地医家も心筋梗塞の診断を正確に行いうるようになり心筋梗塞の臨床的意義が増大してきました。人の寿命が延びて血管病の増加と共に心筋梗塞の頻度が増し更に循環器病のなかでも最も劇的な経過をとるものとして,また症状の上でも予後の上でも特殊な位置を占める病気として心筋梗塞は医人から注目されるようになりました。この時にあたつて,この方面の專門家である皆様の経験とか或は研究治療の進歩について話して貰うのは価値の大きいものとなるでしよう。私に初めに思出というべきものを話させて貰いましよう。我国において心筋梗塞の臨床診断に注目されたのは約20年前の稲田龍吉先生等であると思います。臨床症状で古在由直東大総長の心筋梗塞を生前診断し剖検で確かめたのです。此の頃は心電図の検査により診断がはつきりつけられるようになり,案外頻度の多い病気ということが解つて来ました。
しかし我国で急性心筋梗塞を心電図により最初に診断したのはそう古いことではなく,昭和11年に東大坂口内科の故一色浩氏が東京医学会に行つたものです。
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