Japanese
English
巻頭言
喘息研究からの拾いもの
By-products from my investigations on bronchial asthma
瀧野 増市
1
M. TAKINO
1
1大日本臓器研究所
1Dainippon-Zoki Institute for Medical Research
pp.131-132
発行日 1956年2月15日
Published Date 1956/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200329
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- Abstract 文献概要
私の喘息理論はまだ未完成のものであることをよく自覚しています。然し私としては昭和3年恩師辻寛治教授から戴いたテーマを先生の学説や先輩諸氏の成績にとらわれることなく,ありのままに育てて来たに過ぎないと考えています。先生の数多い門下生の中で私ほど気儘に又自由に振舞い,勢い先生や先輩に御迷惑をかけたものは少ないかと思います。今年の医学総会で辻先生は喘息の特別講演をされる筈になつていました。それが先生の御不快や御夫人の御病気のために中止になりました。当日配布された講演の抄録は先生の肺循環障碍説の記録で,一言,一句曾つて私達が拜聴した臨床講義と同じ調子で述べられています。これを見た私達門下生は懐しい思い出に浸ることが出来ました。しかも私個人としては早くから協同者との実験成績に基いて先生と違つた考えを持つ様になつていましたが,その我儘を許されたばかりでなく,先生の庇護のもとに,全く自由な立場から多数の研究生の指導に当る機会を与えられていた関係上,一層感慨深いものがありました。私が肺循環に興味を持つようになりましたのは先生の喘息学説が肺循環障碍に主因を求めるものであつたからです。終戦後,この方面の研究は外国でも盛んになりましたが,当時は世界の学会でもその報告は非常に少いものでした。
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