Japanese
English
方法と装置
人工心臟について
On the mechanical heart
井上 雄
1
,
石山 季彥
1
,
小泉 乙也
1
Inoue Takeshi
1
,
Ishiyama Suehiko
1
,
Koizumi Otoya
1
1慶応義塾大学外科教室
1Dept. of Surgery Keio University
pp.159-172
発行日 1954年5月15日
Published Date 1954/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200152
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まえがき
人工心肺装置の必要性については斯道の先覚者Gibbon1),によつて次の2つの点が強調されている。即ちその一つは患者の心,肺の何れかが又はこの両者が同時に犯されて生命が危険にさらされた時に,患者の循環の一部を代行する場合である。この際には一時的に,之等の装置を用いてその機能を代行させ,その間に何等かの方法で臟器の恢復を計ろうとするのである。他の一つは心臟内手術を行うに当つて,心臟を空虚とし,直接可視の下で手術を行う為である。前者に属する疾患としては急性冠状動脈血栓,急性肺浮腫,肺動脈栓塞等があり,後者に属する疾患としては,ファロー氏四微,心房中隔欠損,心室中隔欠損,弁狭窄又は閉鎖不全等先天性又は後天性の心内疾患並に心臟附近の大血管の疾患がある。
現在の心臟手術の概念からすれば,人工冬眠の応用によつて,ある程度これらの目標に達しえたとしても,これのみによつてこれらの疾患を完全に修復することは,甚だ困難である。従つてたとえ人工冬眠等が応用される様になつても,心臟外科に於ける人工心肺装置の必要性には何等変るところはない。心肺機能代行の意向は既に前世紀の初めから発し,その後欧米の先達によつて,積重ねられた努力が漸くこの数年に亘つて結実しようとしている。人工心肺装置の研究は先づ人工心から着手された。
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