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人工腎臟
Gordon Murray
pp.260-261
発行日 1948年12月1日
Published Date 1948/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200154
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重症患者に於てほんの短い間腎機能が決定的役割を演んずると考へられる場合がしばしばある.例へば,輸血後の急性無尿症,妊娠其他の中毒症状,或る種の毒物又はサルフア劑使用に依る中毒,此等に於て腎機能が問題になる.此等の場合警戒信號解除になり.數時間乃至數日間に腎機能が恢復する場合が多い.併し乍ら,此の樣な事が偶然に起らなければ,手の施し樣のない状態になつてしまう.處置には種々の方法があるが,一般には此等の處置は無尿症に依る病状に効果がない.此處に於て無尿症に依る不幸を逃がれる方法を考へるなら,若しも,此時に人工腎が利用出來るならば,患者の豫後に重大な變化を來し得る事は考へ得られる.
我々は,數年間の研究の結果腎機能を人爲的方法に置き換へ滿足すべき結果を得た.それは腎機能を營む器械を製作し,此に依つて血液中及び體液中の非蛋白性含窒素物質を減少せしめ,無尿症の場合症状惡化を起す中毒物質の大部分を體外に排泄し得る樣にする事である.勿論この器械は一時的に使用し得る丈である.併し乍ら中毒症で死なないなら,急性疾患では或時間後腎機能は恢復し得る事は明らかであるから,一時的で充分であ,る此器械に依り,尿毒症動物に著明な効果を認められ,更に中毒症患者で豫後不良と言はれた無尿症からの尿毒症から助ける事が出來た.
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