原著
心停止及び心室細動に関する研究
松原 義江
1
1東京女子医大榊原外科教室
pp.115-120
発行日 1954年3月15日
Published Date 1954/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200144
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緒論
近来麻酔の発達と共に心臓外科の長足の進歩をみているが,外科領域に於ける大なる障害の一つとして,術中突然に起る心停止及び心室細動がある。従来この心停止及び心室細動に対しては,心臓マツサーヂによる人工循環や強心剤の心臓内注射等が行われていたが,近時心臓に電気シヨツクを与えて細動を除去し,正常心搏動に復帰せしめ得る事が知られて来た。Hooker,Wigger,Bech,Mauty,等はその手技等について詳しく報告している。しかし,どの位の電力量を用いれば最も確実に心細動を除去し得るかという点については各人まちまちの値を報告している。既に報告した様に,我々は犬を用いての実験の結果至適電力量120V,1.6A,0.05秒を心臓の軸に対して縦軸の方向に通じる時には直ちに心室細動は除去されるだけでなく直接に元の心臓搏動に戻るという事を認めた。(昭和29年3月30日第17回日本循環器学会総会発表,岩本,松原,近く印刷発表予定。)この際心室細動を起してから電気シヨツクを与える迄の時間が問題であつて,一定時間を過ぎたものは当然恢復出来ない。心室細動発生後どの位の時間以内に電気シヨツクを与えたならば恢復が可能であるか?この時間的限界を求めるべく実験を進めた。
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