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PADに対する標準的治療(AHA 2013年ガイドライン)
PADの標準治療に関わる最近1年間のトピックスとしては,同領域において主要なガイドラインであるACC/AHAガイドラインが2005年以来約8年ぶりに改訂された1)ことが挙げられる.主な変更点のうち,検査に関してはABI測定の推奨年齢が70歳から65歳へと引き下げられた.これは,ドイツにおける6,880名の患者を対象としたget ABI試験2)で,65歳以上の患者のうち21%が症候性または無症候性の下肢閉塞性動脈硬化症を有していたとの結果を受け変更されたものであり,無症候性の患者を含めスクリーニング効果の上昇が期待される.また治療に関しては,BASIL試験3)の結果を受けて,重症虚血肢(CLI)患者のうち予後が2年以内と考えられるか,バイパス術に適した自家静脈がない患者に関しては血管内治療が第一選択治療として考えられ,予後が2年以上と考えられ,使用可能な自家静脈のある患者に関してはバイパス術が初期治療として適していると記載されている.その他の点では大きな変更はなく,未だ大腿膝窩動脈領域における血管内治療戦略においてprimary stentingがClass Ⅲの位置づけになっている.同領域においては,後述の通り様々なデバイスによる血管内治療の良好な成績が報告されており,古い内容であると言わざるを得ないだろう.腎動脈に関しては新たな知見が少ないとのことで改訂は行われておらず,大規模なランダム化比較試験であるCORAL試験の結果などが待たれるとされていた.CORAL試験に関しては2014年に結果が発表4)され,心血管イベントの予防において,薬物療法群に比してステント治療群の有意性を示せなかった.腎動脈狭窄に対する血管内治療を行う際には,より慎重に適応を考慮する必要があると考える.
PADに対する血管内治療における最新のトピックスに関して,大動脈腸骨動脈領域においては,新規デバイスとしてカバードステントが注目されている.COBEST試験5)において金属ステントに比してTASC C/D病変での開存率の優位性(HR 0.136;95%CI 0.042〜0.442;p=0.005)が示されているが,CIA領域においてはBMSより開存率が低く,再治療率も高かった(HR 2.5;95%CI 1.2〜5.3;p=0.009)との報告6)もあり,今後ランダム化比較試験での評価が望まれる.大腿膝窩動脈領域は未だ最適な治療について議論が多く,薬剤溶出性ステント,薬剤溶出性バルーンなど様々な新規デバイスが登場している領域であり,詳細は後にトピックスとして述べる.膝下動脈領域の血行再建は,CLI治療の成功に非常に大きな影響を及ぼすが,現在血管内治療として標準的に行われているバルーン治療の再狭窄率の高さが問題となっている.現在までに行われた5つのRCTのメタ解析7)の結果,薬剤溶出性ステントは,短い病変においてバルーン治療と比して開存率,TLR,大切断回避の優位性を示したが,日常臨床で頻繁に遭遇する長区間の病変での有用性は不明である.長区間の病変に関しては,薬剤溶出性バルーンの有用性が報告8)されており,バルーン治療と比べて1年間の再狭窄率が27%対72%(p<0.01),TLRが18%対43%(p=0.002)とされている.症例数の問題か,大切断率に関しては結果が定まっておらず,今後の研究結果が待たれる.CLI患者において,propensity score matching法を用いて患者背景を一致させた結果,スタチンがMACCE,全死亡,大切断または死亡を有意に抑制したとの報告9)があり,低LDL値の患者においても同様の傾向があるのかなど,予後不良のCLI患者に対する治療成績改善のmedical interventionの役割の一つとして今後のスタチンを用いたCLIの研究が待たれる.
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