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PAD治療の現状
[1]はじめに
PAD(peripheral arterial disease)は全身的な動脈硬化症の一部分症である.本邦の生活習慣の欧米化と高齢化,さらに最先端治療法の開発・導入と認知度向上により欧米同様本邦においても動脈硬化性疾患が急増している.他の動脈硬化性疾患を併存し,生命予後が悪いため,早期発見と局所治療と共に併存疾患を包括した治療が肝要である.PAD治療において血管内治療を含む血行再建術を選択する場合,患者のquality of life(QOL)および患者個々の背景,様々な血行再建術式の長所・短所を熟知し決定されなければならない.下肢の症状のない無症候性PADが症状を発症する確率は極めて低いので侵襲的治療の正当性は全くない1).一方,間歇性跛行(intermittent claudication;IC)例と重症虚血肢(critical limb ischemia;CLI)例では生命予後と下肢切断率を異にするため,重症度に応じた治療戦略が求められる.IC例の肢予後は比較的良好で,5年後の転帰でIC悪化は10~20%,大切断に至る可能性は2~3%と報告されているため,ICの治療目的は症状改善に伴うQOL向上にある.一方,安静時痛や虚血性潰瘍・壊死を伴うCLIの予後は不良であり,1年後の死亡率は25%,下肢切断率30%と報告され,その治療目的は下肢切断の回避および生命予後の改善にある2).PADの症状はFontaine Ⅰ~Ⅳ度やRutherford 0~6群に分類され(表1),Fontaine Ⅱ度のICが最も多く約7割を占める.2007年1月に刊行されたPADのガイドラインTASC Ⅱ(Inter-Society Consensus for the Management of Peripheral Arterial Disease)3),ACC/AHAガイドライン4)および日本循環器学会が中心となりまとめられた末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン5)が診断治療の参考になる.
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