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喫煙と呼吸器疾患に関する最近1年間の話題
喫煙が生涯にわたる健康にどのような影響をもたらすかについての課題に一つの回答が与えられた.90歳代になるRichard Dollによって報告された論文であり,1951年から50年間にわたり英国男性医師を対象とした喫煙による予後調査の成績がまとめられている1).この研究の調査開始時点で登録された対象医師は34,439名であった.この調査からは,喫煙により死亡率が増加する原因として,呼吸器疾患,血管系疾患,腫瘍性疾患が挙げられている.調査時点で20~50歳であった対象者についてみると,喫煙を継続した者は非喫煙者よりも死亡年齢が10年若かった.禁煙を開始した年代別で調べた結果では,30,40,50,60歳で禁煙をした場合には,それぞれ10,9,6,3年の寿命延長効果がみられることが明らかとなった.35~69歳の年代で比較した場合には,喫煙者の致死率は非喫煙者のそれに比較して2~3倍であった.
喫煙に関わる呼吸器疾患としては,肺癌2~5),COPD6~8),気管支喘息9),びまん性肺疾患10,11)などが挙げられる.肺癌については,従来より発癌リスクの第一要因として喫煙が指摘されてきたが,能動喫煙にしても受動喫煙にしても肺癌発生への危険性の詳細については明らかではなかった.例えば,喫煙歴はこれまで1日の喫煙量(本数あるいは箱)×年数で表すことが多く,1日の喫煙量か喫煙年数のいずれが重要であるのかが不明であった.これらの疑問に対してFlandersら12)は,肺癌致死率には1日の喫煙本数よりも喫煙年数のほうが重要な影響因子であることを示した.肺癌発生には個々の喫煙の他に,環境中タバコ煙(ETS)といわれるいわゆる受動喫煙の問題がある.このETSが発癌と関係する遺伝子に傷害をもたらすことが1980年代半ばから研究されてきたが,タバコ煙に曝露された喫煙者と非喫煙者を比較した研究からは,両者で同様の遺伝子変異が観察されることが明らかとなった13).したがって,タバコ煙に関連した癌の発生機序は非喫煙者であっても,喫煙者と同様の過程を経て癌が発生すると考えてよいようである.
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