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はじめに
肺静脈閉塞症(pulmonary veno-occlusive disease;PVOD)は原因不明で最終的に肺高血圧を呈する極めて予後不良な疾患である.患者は時に顕性または不顕性の肺胞出血を呈することがある.稀ではあるがこれまでに全国レベルで調査されたことはなく,正確な症例数は未だに把握されていない.PVODは稀な疾患とされているがその実態は不明である.特発性肺動脈性肺高血圧症(PAH)の約5~10%1),人口100万人に0.1~0.2人と非常に稀である.PVODの臨床症状は肺動脈性肺高血圧症(idiopathic pulmonary arterial hypertension;IPAH)に類似するが,病理学的にはPVODは文字通り肺の静脈閉塞が病変の首座であり,PAHの治療にも抵抗性で,現時点では肺移植のみが根治的治療法である.一般内科診療において臨床所見だけでPVODを疑うことは困難であり,これまでPVODの確定診断は病理解剖や肺移植摘出肺生検肺(video-associated thoracoscopic surgery;VATS)などの病理組織診断でのみ可能とされてきた2).最近では数種の血管拡張剤が臨床導入されているが,PAHに比べ内科的治療効果は期待できず,肺移植を行わない限り,生命予後は数年とされている難病である.日本でもPVODは病理組織診断以外に確定診断が困難なため,臨床現場ではPVODと診断されずPAHに包括され治療されていると推察する.これまでもPVODで家族内発症例,膠原病合併例などが単発的に報告されている.膠原病合併PAH,骨髄移植後PVODなど二次性のPVODが潜在的に存在すると考えられ,PVODの実態は現行の報告よりも患者数は多いと考えられる.本稿ではPVODの病理組織について解説する.
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