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はじめに
循環器系は体循環と肺循環に大別され,肺循環の主要な機能は肺ガス交換の場を提供することにある.また肺循環系には体循環系で生じた血栓などの濾過機能や,肺血管内皮細胞における血管作動物質の代謝など内分泌器官としての役割など,多彩な機能も備わっている.他臓器と同様に肺循環にも種々の病的状態/疾患が生じるが,近年特に注目されている病態としては肺血栓塞栓症や種々の肺高血圧症を挙げることができる.
Eisenmenger症候群や特発性の肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension;PAH)などの高度肺高血圧症は,右心不全と肺ガス交換能障害による低酸素血症を主徴とし,その原因は十分解明されておらず予後も非常に不良の疾患群である.従来,肺高血圧症は症例数は少なく,右心カテーテル以外には確定診断法が存在せず治療法もなく,このため本症が臨床家の興味を集めることは多くはなかった.しかし,1967年にスイス・ドイツやオーストリアにおいて,原因不明の肺高血圧症がアウトブレイク的に増加した.またその肺血管病変は原発性肺高血圧症(primary pulmonary hypertension;PPH,現在の特発性PAHの旧病名)と極めて近似し,食欲抑制剤aminorexの摂取がその誘因であることも判明し,改めて関係者の注目を浴びた.そして本症への対策の一環として1973年にWHO主催のPPH専門家会議がジュネーブで開催され,肺高血圧症一般について,疾患概念・病型分類や用語の統一法などが討議された.現在は5年ごとに肺高血圧症ワールドシンポジウムが開催され,その時々の肺高血圧症に関わる最新の知見が総括されている.本稿では最新の肺高血圧症ワールドシンポジウムで提案された肺高血圧症臨床分類を基礎に,肺高血圧症へのアプローチ法を考察する.
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