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肺循環と病理学的異常
平均肺動脈圧の上限は20mmHgであり,左房圧の上限が10~15mmHg前後であるため,肺動脈内の潅流圧は5~10mmHg前後となる.したがって,左房圧が上昇すると容易に肺高血圧症を呈し,肺高血圧症として最も頻度の多い疾患は左心機能障害を示すものである.拘束型心筋症は左室収縮能が正常で心エコーなどでは診断が難しく,存在が見過ごされると,左房圧はかなり高値となるため原因不明の肺高血圧症と診断されることがある.
肺動脈は直径0.5mm前後を境として弾性動脈と筋性動脈に分類される.直径0.1mm前後より細い血管は肺動脈細動脈とされ,容量血管として最も多量の血液を含有している.肺動脈細動脈の内膜・中膜はともに薄く弾性板も一層で血管抵抗は動脈の10分の1であり,労作時には肺動脈圧をあまり上昇させることなく多量の血液を潅流することが可能となる.肺動脈細動脈が病変の首座となり拡張が制限されて血管抵抗が上昇すると,古典的な呼び方ではprecapillary pulmonary hypertensionとされた肺動脈に一次的な異常がある肺高血圧症を生ずる.肺動脈細動脈を硬化させる病理学的異常は,平滑筋細胞の増殖による中膜の肥厚,平滑筋細胞の関係した機序による内膜の増殖,外膜の増殖などによる.これらの反応にはbasic fibroblast growth factor,platelet-derived growth factor,transforming growth factor,matrix-degrading enzyme,elastase,matrix metalloproteinase1)などが関係していることが知られている.重症肺高血圧症でみられるplexiform lesionは血管新生に関係した内皮細胞の集合と考えられている.肺高血圧症でみられるもう一つの病理学的異常は小血管における血栓形成と再開通像である.ワーファリンが肺高血圧症の予後改善に有効である機序の一つと考えられる.
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