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先日呼吸器外科の先生方との座談会に参加して,呼吸器外科手術の術前循環器リスク評価と周術期の循環器系疾患合併症例の管理について意見を交換した.近年の冠動脈疾患患者数の増加とその予後の改善は,慢性冠動脈疾患の患者数を急速に増加させ,当然のことながら経過中に肺がんを含む悪性腫瘍の合併症例も増加している.これらの非心臓手術の術前評価をより系統立てて行う必要性は以前から認識されていたが,特にカテーテル治療後の抗血小板剤の継続あるいは中止の在り方など最近注目されている新しい課題について,活発な議論が交わされた.抗血小板剤の問題は呼吸器外科領域だけではなく,内視鏡時手術を含むすべての外科領域の問題で,それらに対応してAHA/ACCや日本循環器学会でも非心臓手術の管理に関するガイドラインが相次いで改訂されている.ガイドラインが日常臨床でしばしば遭遇する臨床判断の規準をタイムリーに標準化して提供することは意義深い.そのためにはガイドラインの背景となるエビデンス作りも重要で,臨床の問題に迅速に対応した臨床疫学研究の推進が欠かせないが,それをサポートする機関が,最近わが国にも徐々に増加していることは心強い.
呼吸器と循環器の関連について最近のもう一つの注目点に慢性閉塞性肺疾患(COPD)がある.WHOは近い将来COPDが世界の死因の第3位になると予測しており,わが国の健康日本21でもCOPDが取り上げられ,その認知度を上げて予防と早期発見につなげることが提言されている.いくつかの観察研究によるとCOPDの5%前後に狭心症が,1~2%に心筋梗塞が合併し,対照群と比べて心血管疾患のリスクは5倍になると報告されている.一方,冠動脈疾患の7~15%にCOPDが合併しており,それぞれ生命予後を悪化させる重要な因子であると共に,その合併が単に併発しているのではなく発症や増悪の過程に,炎症や酸化ストレス,低酸素などの共通の病態が存在することが指摘されている.この循環器疾患とCOPDの併存の把握と対応についても呼吸器内科と循環器内科の連携が今後ますます重要になることが予想される.
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