Japanese
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特集 生活習慣と心腎連関
心腎連関の分子機序
Molecular Mechanism of Cardio-Renal Syndrome
上村 史朗
1
,
斎藤 能彦
1
Shiro Uemura
1
,
Yoshihiko Saito
1
1奈良県立医科大学第一内科
1First Department of Internal Medicine, Nara Medical University
pp.691-697
発行日 2012年7月15日
Published Date 2012/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101999
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はじめに
近年の疫学的調査によって,腎機能障害を有する患者では高頻度に心血管疾患を合併すること,さらに心血管疾患が腎機能障害患者の死因の上位を占めることが明らかになっている.軽度の腎機能障害患者においても心血管系疾患の罹患率やそれによる予後が不良であるとの報告があり,米国腎臓財団(NKF)が中心となって慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)の概念が確立されて広く認知されるようになっている1).さらに最近では,微量アルブミン尿の定義に達しないごく軽微なアルブミン尿を呈する人口集団においても,心血管疾患の罹病率が有意に増大することが証明されている2).一方,心機能低下症例では腎機能が低下することは以前から知られており,この二臓器の機能障害が互いに結び付く現象は「心腎連関」と呼ばれるようになった.
一般にCKD患者では,高血圧,脂質代謝異常,糖尿病などの古典的な動脈硬化の危険因子の合併率が高いことが心血管疾患の高い発症率に寄与していると考えられるが,著明な発症率の高さを説明する根拠としては不十分であり,腎機能障害と心血管疾患の発症を直接的に結び付ける分子機序の解明が望まれている.
心腎連関の機序には現在なお不明な点が多く残されているが,本稿では最近解明されつつある腎機能障害と心血管疾患を結び付ける分子機序,特にレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の亢進,血管内皮細胞における一酸化窒素(NO)の産生低下,酸化ストレスの増大,慢性炎症,血管石灰化の促進などについて概説する.
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