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A型インフルエンザウイルス
インフルエンザは毎年冬に流行するだけでなく,数十年に一度,抗原性の異なるウイルスが突如出現し,世界的な大流行(パンデミック)を引き起こす.その原因となるA型インフルエンザウイルスは,オルソミクソウイルス科に属し,8本に分節化したマイナス一本鎖RNAをゲノムとして持つ.A型ウイルスの自然宿主は,水禽(特に野生のカモ)である(図1).これまでに知られているすべての亜型のA型ウイルス(H1~H16,N1~N9)は水禽に存在しており,ヒト,家禽,ウマ,ブタなどで流行するすべてのA型ウイルスは,野生の水禽に分布するA型ウイルスを遺伝的起源に持つ1).
A型インフルエンザウイルス粒子は,直径約80~120nmの球状,あるいは太さ約80nmで長さが数マイクロメートルにも及ぶフィラメント状構造を示す.ウイルス粒子は宿主細胞由来の脂質二重膜であるエンベロープに包まれており,その表面には赤血球凝集素(hemagglutinin;HA),ノイラミニダーゼ(neuraminidase;NA),水素イオンチャネル活性を持つM2が存在する(図2).エンベロープの内側には,マトリックス蛋白質であるM1が結合し,ウイルス粒子の構造を維持している(図2).エンベロープ内部には,リボヌクレオ核酸蛋白質複合体(ribonucleoprotein complex;RNP)が含まれる.RNPは,ゲノムRNA分節,PB1(basic polymerase 1),PB2(basic polymerase 2),PA(acidic polymerase)からなるヘテロ3量体のRNA依存性RNAポリメラーゼ,および多数のウイルス核蛋白質NPから構成される(図2).個々のウイルス粒子内には,8本のRNPが規則的に配置されている(図3)2).RNPの核外輸送を担うNEP/NS2(nuclear export protein/nonstructural protein 2)はウイルス粒子中に少量含まれるが,ウイルス粒子内での局在は不明である.
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