書評
―Fong, I.W. 著 岩田健太郎 監訳―感染症のコントラバーシー―臨床上のリアルな問題の多くは即答できない
青木 眞
1
1サクラ精機
pp.946
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101791
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『感染症のコントラバーシー』をようやく読了した.数日で終えるつもりであったが,毎日のように読み続け,何週間も経過していた.本としてはA5判で500ページ弱のボリュームであるが,気づけば最小フォントでつづった推薦文用のメモがA4で42ページになり,その内容の大きさと深さに改めて思いをめぐらせた.いったい臨床感染症の広がりはどこまで行くのだろうか….コントラバーシーを語る以上,「議論のあるなし」「何がわかっていて,何がわかっていないか」を知っているのが前提であるが,実は感染症専門医歴20年に近い自分はこれが不十分であったことを正直に告白しなければならない.
コントラバーシーが示す風景の反対側に,研修医が陥りやすい病気である「マニュアル病」がある.「マニュアル病」とはマニュアルどおりの診療が最良の医療であると信じる病気である.すなわち,この臓器の,この微生物による感染症には,この抗菌薬を,この量で,この期間投与する,ペリオド.自信満々.これは明らかに「マニュアル病」の臨床像であるが,実は「マニュアル病」にはさらに奥深い病態が存在している.それは,この感染症の起炎菌は本当にこの微生物なのか? なぜ,これがベストの抗菌薬で,この量・投与期間なのか…,という健康な疑問を持たなくなる病態である.臨床現場はコントラバーシーで満ちている.監訳者の岩田健太郎先生曰く「わかっていることとわかっていないことの地平を知るべきである」.
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