書評
「構造と診断―ゼロからの診断学」―岩田健太郎 著
前野 哲博
1
1筑波大病院・総合診療科
pp.525
発行日 2013年6月20日
Published Date 2013/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413103249
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最近,臨床推論に注目が集まり,診断学に関する本が数多く上梓されている。ただ,その多くは,臨床診断に至るプロセスを理論的に記述したものや,「○○があれば△△病を疑う」といった実践的なマニュアル本が多い。本書は,そういった類書と一線を画し,著者の言葉を借りれば「メタ診断学」,つまり「診断する」という行為そのものに焦点を当て,診断とはそもそも何なのか,診断とはいかなる営為なのかを論じた本である。
ひとくちに「診断」と言っても,実際の診療では患者ごとに1人ひとり病歴は違うし,いくら調べても診断がつかないことも多い。しかしながら,臨床医は診断がつくかどうかにかかわらず「決断」しなくてはならない。入院させるのか帰宅させるのか,薬を処方するのかしないのか,その場で決めなくてはならない。もっと悩まずに適切に診断をつけ,最良の医療を提供できる方法はないだろうか? もしも,臨床推論に関する本を片っ端から読みあさり,ハリソン内科学を全部暗記すれば,自信を持って診断をつけられるようになるだろうか? ―答えは「否」であろう。
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