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Ischemic preconditioning
急性心筋梗塞における再灌流療法は梗塞サイズを縮小し予後を改善する.早期の再灌流は,より大きな心筋救済をもたらすが,発症からの経過時間が同じであっても再灌流の効果は一定ではない.その違いを生じる重要なメカニズムの一つとしてischemic preconditioningが知られている.Ischemic preconditioningは1986年にMurryら1)が最初に報告したもので,冠動脈を40分間結紮したのちに再灌流させたイヌの実験結果で,先行して5分間の虚血と5分間の再灌流を4回繰り返しておくと梗塞サイズが25%まで減少した(図1).この現象はヒトを含む検討された全ての動物種で,また心臓のみならず脳や腎臓など他の組織でも生じることが確認されている.
ヒトにおいてもischemic preconditioningの存在することは,予定された心臓手術や経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention;PCI)において明らかとされた.Yellonら2)は1993年に冠動脈バイパス手術において,人工心肺を開始する直前に短時間の大動脈遮断(intermittent cross-clamp)により一過性の虚血を先行させると,手術中の大動脈遮断による心筋内ATPレベルの低下が抑制されることを報告した.その後の研究でも,intermittent cross-clampにより心臓手術における心筋逸脱酵素の上昇が抑制され,心機能も良好となることが示されている.同様に,PCIでもballooningにより冠動脈を閉塞すると虚血によりSTが上昇し乳酸が産生されるが,ballooningを5分間の間をあけて2回以上行うと,2回目以降のballoningではST上昇や乳酸産生が少なく,心筋虚血が軽減する3).
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