Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
気道炎症のマーカーとしての一酸化窒素(NO)
炎症とは,外部からの刺激によって組織に起こる変化であり,主徴として発赤,腫脹,疼痛(知覚神経の刺激)が挙げられるが,気管支喘息患者の気道粘膜でもまさしくこれらの所見が認められる.こういった喘息の炎症反応は,抗原抗体反応によって気道に浸潤した肥満細胞,好酸球,リンパ球から放出された化学伝達物質,顆粒分子,炎症性サイトカインによって起こる1).具体的には,マスト細胞や好酸球由来のロイコトリエンC4,D4(LTC4,D4)による気道粘膜下の血管平滑筋拡張(血管容積の増大)や微小血管内皮収縮による透過性亢進作用,好酸球から放出されるmajor basic protein(MBP)といった顆粒蛋白による気道上皮の剥離作用を介した気道の知覚神経末端の露出による知覚神経の易刺激性が炎症の本態である1,2).LTC4,D4に加え,ヒスタミンやプロスタグランジンといった化学伝達物質は,知覚神経の刺激作用を有し炎症はさらに増幅される.
一酸化窒素(NO)は一酸化窒素合成酵素(NOS)によって産生されるが(図1),NOSは気道にも存在し(表1),喘息の炎症関連物質のひとつと考えられる.気道でのNOの作用は,恒常型NO産生酵素(eNOS)由来の少量のNOによる気道平滑筋拡張作用や血流の保持といった生理的作用と,誘導型NO合成酵素(iNOS)由来の大量のNOによる炎症惹起物質としての働きがある.喘息気道では炎症細胞由来の種々のサイトカインによりiNOS産生が増強している.NOSの阻害薬による遅発型アレルギー反応の抑制3)や,選択的iNOS阻害薬前投与4),iNOS欠損マウスによる抗原抗体反応後の好酸球浸潤と気道過敏性亢進の抑制は,喘息によるNOの炎症作用の優位性を支持する5).
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.