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はじめに
非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation;NPPV)は,シリコンなどを用い密着できるマスクを介して気道に陽圧をかけ換気をサポートする治療法である.気管内挿管や気管切開下の人工呼吸と比べ非侵襲的で,種々の利点があるが欠点もある(表1).呼吸器疾患での有用性は特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪や,免疫抑制患者における急性呼吸不全に対する呼吸管理で多くのエビデンスが示されている1).一方,慢性呼吸不全に対して予後の改善,頻回の急性増悪の回避,睡眠や健康関連QOLの改善などを目標に在宅での長期人工呼吸療法が広く行われている.ここでもNPPVは操作が簡便であり,ケアを行う家族の技術的負担や患者の不快感,気管切開に関連した合併症,また医療コストの軽減が得られるなど,優位な点が多く指摘され使用が広まっている2).
NPPVによる長期人工呼吸療法(主に夜間の使用)に関しては仏,英,本邦にて長期追跡調査が施行され,(1)肺結核後遺症や後側彎症などの胸郭性拘束性換気障害およびポリオ後遺症で特に有効,(2)神経筋疾患でもある程度有効,(3)著しい高炭酸ガス血症を伴うCOPDではある程度効果が期待できるが気管支拡張症ではあまり有効ではないとされている3).しかし一般に,血液ガスや睡眠,健康関連QOLの改善などに対してはその有用性が認められているものの,予後や急性増悪の回避に関しての効果は今後の検討課題である.2006年に発行された本邦のNPPVガイドラインでは,COPDの急性増悪はエビデンスレベルⅠ・推奨度A,肺結核後遺症の急性増悪はレベルⅣだが推奨度A,免疫不全に伴う急性呼吸不全ではレベルⅡ・推奨度Aなどと,急性呼吸不全に関しては推奨度Aの疾患がある.一方慢性呼吸不全に関しては,拘束性換気障害がエビデンスレベルⅣ・推奨度C,COPDではレベルⅡ・推奨度Cとエビデンスレベル・推奨度ともにまだ低かった4).
本稿では,慢性呼吸不全を来す疾患に対するNPPVの有用性について最近の報告を踏まえ概説する.
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